建設業許可が取り消しされるケースと再取得の方法を解説

2022/1/19

2024/10/07

【この記事の監修】

伊東綜合事務所 代表 伊東良之

伊東綜合事務所

代表/行政書士伊東 良之

2008年に行政書士事務所を開業以降、高度専門職や技術・人文知識・国際業務などの就労系在留資格を中心に、配偶者、永住などの身分系在留資格にも幅広く対応。
自分自身も外国で就労ビザを取得し働いた経験を踏まえ、不安を感じながらも日本での活躍を希望する外国人にとって一番近い存在になるべく丁寧な対応を心掛け、在留資格申請を行っている。

建設業許可の再取得を希望する事業者の方に向けて、再取得に必要な知識をまとめてご説明いたします。

建設業許可では何らかの事情があり、許可を取り消されてしまうことがあります。

建設業許可を取り直す「再取得」は、申請方法としては「新規で取り直し」にあたります。全くの新規で取得するときは異なる注意点があるため、再取得のケース別に解説します。

建設業許可が取り消しになるケースをご紹介

建設業許可が取り消しになるケースは「不利益処分による取り消し」と「手続き上の取り消し」の2種類がございます。

それぞれ簡単に解説します。

不利益処分による取り消し

「不利益処分による取り消し」とは、建設業法に違反し、不利益処分を受けた場合に建設業許可が取り消されることを言います。

不利益処分による取り消しがされると、5年間は建設業許可を取得することができません。

手続き上の取り消し

「手続き上の取り消し」とは、不利益処分による取り消しとは違い法令違反などがあったわけではなく、建設業許可の条件を維持できなくなった場合に建設業許可が取り消されることを言います。

このケースの場合、建設業許可が取り消された場合にも、条件さえクリアすれば5年待たずに再度建設業許可を取得することが可能です。

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建設業許可の再取得とは

建設業許可の再取得とは、建設業許可を取り消された事業者が再度、建設業許可の取り直しの申請をすること、またはその手続きを指します。

建設業許可は更新制で、新規取得の申請以外にも、手続きが簡易化された更新申請があります。

(関連記事)建設業許可の有効期間は?更新期限は?いつ申請すべきかを解説

「建設業許可の再取得」はインターネットでも一定数の検索がある慣例表現ですが、ご説明している通り「建設業許可の取り直し」に該当します。本記事では便宜上、再取得と表現して解説しますが、実際の手続きとして建設業許可の再取得の申請が別に存在するわけではありません。ご注意ください。

建設業許可の「取り消し」は事務的な手続き上の話です。建設業許可の有効期間の中であれば、すぐに建設業許可の申請によって再取得まで行かずに挽回できます。

建設業許可の「失効」は、取り消しのまま建設業許可の有効期間が過ぎて、建設業許可の効力がきれてしまった状態を言います。

建設業許可には「不許可」という建設業許可の申請書類が受理され、何らかの理由で書類が返されてしまう状態もあります。

例えば「申請する会社の中に反社会的勢力とつきあいのある人がいた」などの欠格事由で「不許可」になった場合、原因を改善し、条件を満たさないと建設業許可はおりません。

建設業許可の状況によって「すぐに再取得できるケース」と「すぐには再取得できないケース」があるのです。

建設業許可が取り消されても再取得できるケース

建設業許可の取り消しは、いくつかのパターンがあります。

専任技術者が退職したのに変更届を出さなかったなど、建設業許可が取り消されたとしても手続きすることですぐに再取得できるケースと手続き内容をご紹介します。

(ケース1)手続きを忘れていて建設業許可が取り消された

建設業許可の有効期限は取得から5年間ですが、その間に事業者は変更届を出す義務があります。

変更届には2種あります。

  • 毎年出さなくてはいけない「決算変更届」(事業年度終了報告)
  • 変更があったときに都度提出する「変更届」

決算変更届は、事業年度の終了後4カ月以内に都道府県、もしくは地方整備局へ提出しなければなりません。

変更届や更新手続きを忘れたケースの多くは、有効期間内であれば、建設業許可の「失効」はしておらず、すぐに変更届などの必要な対応をすれば再取得せずに済むでしょう。

建設業許可の更新忘れの失敗例5つと対応策と申請要件を解説

(ケース2)取り消しの要件に該当して許可を取り消された

更新申請などの手続き上で、取り消し要件に該当し、建設業許可が取り消されるパターンもあります。

以下の条件にあてはまると認められた場合、建設業許可の許可を取り消されます。

  1.  建設業許可に付された条件に違反した
  2.  経営業務の管理責任者の要件を満たさなかった
  3.  専任技術者の要件を満たさなかった
  4.  欠格要件に該当する
  5.  廃業届を提出した

4の欠格要件に該当する以外は、有効期間内に必要な手続きを踏めば、比較的すぐに許可はまた有効となります。

以下に事業者が行うべき手続きをまとめたので、ぜひご参考にしてください。

手続きをしないまま有効期間が過ぎ、建設業許可が失効した場合は再取得の手続きが必要です。

[建設業許可が取り消された場合の事業者が行うべき再取得の手続き]
要件を満たさない項目 事業者が行うべき手続き
(1) 建設業許可に付された条件に違反した 以下5つの要件を満たしてから新規で許可申請をする。

  1. 建設業に係る経営業務の管理を適正に行うに足りる能力を有する者
  2. 専任技術者の設置
  3.  誠実性
  4.  財産的基礎
(2) 経営業務の管理責任者の要件を満たさなかった 現・管理責任者の要件を満たすか、要件を満たす新・管理責任者を迎え入れ、変更届を提出する。
(3)専任技術者の要件を満たさなかった 現・専任技術者の要件を満たすか、要件を満たす新・専任技術者を迎え入れ、変更届を提出する。
(4)欠格要件に該当する
  • 取り消しから5年(*)経過してから再取得を試みる。
  • 該当の役員等を退任させ、欠格要件に該当した内容を届け出る。
(5) 廃業届を提出した
  • 廃業届は業種ごとに申請するものなので、廃業届を提出していない業種に関してはそのまま営業できる。
  • 廃業届を提出した業種で新たに許可を取得したいのであれば、新規で許可取得の手続きをする。

(参考)許可の要件|国土交通省

*(4):5年間が開始されるのは「罰金や執行猶予などで刑の執行が始まった日から」となります。執行猶予が5年よりも早く終わる場合は、その時点で許可申請をすることができます。

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建設業許可の再取得ができないケース

残念ながら、建設業許可の再取得ができないケースはいくつかあります。

(ケース1)欠格要件に当てはまった

建築業許可の審査の中で、事業者が満たすべき要件として「欠格要件に該当しない」という要件があります。

欠格要件とは、建築業法第7条で規定されている内容を抜粋すると次の通りです。

  • 1.破産者で復権を得ないもの
  • 2.建設業の許可又を取り消され、その取消しの日から5年を経過しない者
  • 3.建設業の許可の取消しの通知があった日から当該処分に関わる決定があった日までの間に5年を経過しないもの
  • 4.前号に規定する期間内に届出があった場合において、前号の通知の日前60日以内に当該届出に係る法人の役員等や使用人であった者等で、当該届出の日から5年を経過しないもの
  • 5.営業の停止を命ぜられ、その停止の期間が経過しない者
  • 6.許可を受けようとする建設業について営業を禁止され、その禁止の期間が経過しない者
  • 7.禁錮以上の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又はその刑の執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
  • 14.暴力団員等がその事業活動を支配する者

参照:許可の要件|国土交通省

具体的には、役員が飲酒運転やスピード違反で罰金の対象となった(行政処分)、つり足場の解体作業をするにあたり安全ベルトの装着や幅20cm以上の足場板を設けるなどの安全措置を講じないで作業をさせていた(営業停止)、などの事例があります。

(ケース2)不利益処分で失効した

建設業許可で不利益処分に該当すると5年間、建設業許可を取得できません。

ちなみに「不利益処分」は通称で、建築業法では「監査処分」と言われています。

<不利益処分(監査処分)に該当する内容>

  1. 不正の手段により新規、更新の許可を受けた
  2. 許可行政庁の指示処分に対して、情状の重い指示処分違反をした
  3. 許可行政庁の営業停止に違反した
  4. 暴力団員として登録されている

参考:建設業者の不正行為等に対する監督処分の基準|国土交通省 

不利益処分を受ける前には、必ず行政から事業者に「聴聞」(ちょうもん)あるいは「弁明」(べんめい)といった反論の機会が与えられています。

不利益処分が不当だと思われる場合は、建設業許可に詳しい行政書士や弁護士に反論の手助けをしてもらうというのも、ひとつの方法です。

具体的には、次のように法律違反で罰金や執行猶予などの罰則を受けると、不利益処分を受けます。

<不利益処分の事例>

  • 職業安定法及び刑法に違反をして懲役および執行猶予の罰が下された
  • 建設業許可なしで規定の金額以上の工事を受注し、自治体から営業停止命令を受けた。しかし、それにも関わらず引き続き営業をしていた

特に「建設業許可がないのに1件500万円以上の直接請負をした」事例は、国土交通省の「ネガティブ情報等検索サイト」で複数見られるため、違反者は後を絶たないのがわかります。

なお、不利益処分を一度受けると、その事業所の代表・役員だけでなく従業員も不利益対象としてみなされます。
メンバー構成を変えて別の会社として立ち上げて建設業許可を申請しようとしても、5年間は建設業許可の取得はできない仕組みなので、注意しましょう。

建設業許可の再取得に必要な費用

建設業許可を再取得として新規申し込みをする場合は、次の費用が必要です(申請代行を依頼する場合は委託費用も別途必要です)。

建設業許可の再取得で必要な費用
許可の種類 申請手数料
知事(一般) 90,000円
知事(特定) 90,000円
大臣(一般) 150,000円
大臣(特定) 150,000円

手数料の納付は国土交通大臣許可の場合は各地方整備局に付随する税務署へ納入します。詳細は、以下の国土交通省の公式ページをご覧ください。

(参考)許可申請の手続き|国土交通省

建設業許可の再取得で必要な書類

過去に一度でも建設業許可の取得をしたことがある場合は、その際の書類を活用することでまったくの新規で許可取得をするよりは時間を節約できることがあります。

例えば、前述した「決算変更届(事業年度終了報告)」と「廃業届」です。この書類があることで、過去に許可を取得してどのような工事経歴があるのか、財務状況だったのかという実績が証明でき、かつ、決算状況や廃業までの流れをスムーズに証明できます。

その他にも、以下の書類あると比較的スムーズに許可取得を進められます。建設業許可を取得した際の書類はなくさないように大切に保管しておきましょう。

<建設業許可を過去に取得していて再取得する際にあるとよい必要書類>

  • 建設業許可通知書
  • 決算変更届(事業年度終了報告)
  • 廃業届
  • 申請書副本(経営業務の管理責任者証明書、専任技術者証明書、営業の沿革) 

なお、建設業許可に関わる書類作成は手書きだけでなく、国土交通省が紹介する作成ツールが無料提供されています。ご興味のある方は、以下のリンクよりご確認ください。

(参考)なんでも経審Plusのご案内|一般財団法人建設業情報管理センター

(参考)かんたん書類マネージャ|ワイズ公共データシステム株式会社

建設業許可を新規で取り直す再取得時の流れ・注意点

建設業許可を失効してしまうと、手続き上、新規で取り直すことになります。

建設業許可の申請には「新規」以外にも知事許可から大臣許可への切り替えやその逆の手続きである「許可替え新規」という手続きもありますが、ここでは許可を取り消しなどで新規取得するケースについて説明します。

「新規」の手続きは、現在どこからも有効な建設業許可をもっていない時にできる手続きです。まずは前述した必要書類を用意します。次に提出先を確認し、直接持参するか郵送で送付します。郵送の場合、東京都のように「建設業許可申請送付票 兼 審査票」が別で必要となることがあります。

(参考)建設業許可申請送付票兼審査票|東京都市整備局

知事許可と大臣許可では手続き場所が異なるため、事前に住所や電話番号をネット検索で調べ、事前に営業時間などを問い合わせしておくとスムーズに手続きできます。

知事許可 大臣許可
【提出先】都道府県知事

【提出する場所】都道府県の建設業課や土木事務所などの窓口

例)東京都の場合

東京都都市整備局市街地建築部建設業課

【提出先】各地方整備局長

【提出する場所】各地方整備局の建設業申請窓口

例)主たる営業所が東京都千代田区の場合

関東地方整備局建政部建設産業第一課建設業申請・届出窓口

提出を郵送対応にするときは必要書類の用意に加え、副本を後日返送するレターパックの副本返信用の同封が必要な場合があります。(東京都の場合)

  1. <建設業許可を新規で取り直す再取得時の流れ>
  2. 必要書類の準備
  3. 提出先を確認
  4. 提出書類を窓口へ直接持参か郵送する
  5. 受理される
  6. 手数料の納入
  7. 審査期間(約1カ月)
  8. 許可

再取得を行うと、許可番号が変わります。入札する際は許可番号が変わったことを変更手続きで申請しなくてはいけません。

まとめ

建設業許可の再取得を希望する事業者の方に向けて必要な知識、建設業の許可取り消しとなった場合、再取得できるケースとできないケースについて解説しました。

欠格事由に該当したケースや不利益処分になったケース以外の理由で、取り消しとなった場合、事務処理手続きを踏むことで建設業許可を再取得できます。

再取得に限らず、建設業許可申請についてお悩みの方は「行政書士 伊東綜合事務所」までお気軽にご相談ください。

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