電気工事を行うときに建設業許可が必要かどうかは500万が基準
2021/11/4
2024/10/07
電気工事を行うときに、建設業許可が必要になるかどうかを左右するのは「500万円」という金額です。電気工事業も建設業の1つに該当しますが、状況に応じて必要となる許可等が異なります。そこで、今回は電気工事と建設業許可の関係について解説します。
Contents
500万円以上の電気工事を行う場合、電気工事業の建設業許可が必要
建設業者が税込みで500万円以上の電気工事を請け負うときは、電気工事業の一般建設業許可を受けている必要があります。
また、元請として請け負う工事で、下請工事業者への発注金額の合計が4,000万円以上となる案件を受注するのであれば「電気工事業の特定建設業許可」を取得していなければいけません。
500万円未満の電気工事を行う場合、建設業許可は不要
電気工事で建設業許可が必要になるのは、500万円以上の案件を請け負うときです。
言い換えれば、500万円未満の「軽微な電気工事」であれば建設業許可は不要です。
建設業許可は不要だが、電気工事業の登録が必要
建設業の線引きは曖昧で、一方で許可がいらなくとも、もう一方では必要になるケースもあります。電気工事もその例にもれず、電気工事を行う時は500万円以下であっても電気工事士法と電気工事業法によって定められている「電気工事業の登録」を各都道府県にしなければいけないことが法律で定められています。
500万円未満の電気工事であれば、手続きが必要ないというわけではないので注意しましょう。
電気工事の建設業許可を申請する注意点に関しては、以下の記事で詳しく解説しております!
電気工事業の登録とは
電気工事業の登録が義務付けられている主な理由は、安全で健全な施工を確保するためです。登録の主な要件として「主任電気工事士」を営業所ごとに置かなければなりません。
また、主任電気工事士となれるのは次のどちらか一方の項目を満たしている必要があります。
- 「第一種電気工事士」の免状の交付を受けている者
- 「第二種電気工事士」の免状の交付を受けた後、電気工事に関し3年以上の実務経験を有する者
電気工事業はきちんと施工されないと爆発や火災など著しい被害を及ぼす事故が起きかねません。そのため、電気工事業を行うには請負業者が専門の技能をきちんと習得していることが大切になるのです。
万が一、未登録で電気工事業を行ったときは法律違反になります。最悪の場合は1年以下の懲役、もしくは10万円以下の罰金、あるいはその両方が課されるケースがあります。
電気工事業に登録するためのステップを紹介
電気工事業として登録することは、要件さえ満たせていればさほど難しいものではありません。今回は電気工事業として登録する際のステップをご紹介します。
ステップ1:「登録電気工事業者」か「通知電気工事業者」を確認
電気工事業の登録には「登録電気工事業者」と「通知電気工事業者」の2パターンがあります。
電気工事業の登録は実際に取り扱う施工の内容によって「通知電気工事業者」で事足りるのか、「登録電気工事業者」でなくてはいけないのかが変わってきます。登録では登録税が22,000円ほどかかりますが、通知では費用がかからないため、登録する前に事前にどちらになるのか確かめておくようにしましょう。
登録電気工事業者になるケース
登録電気工事業者では、ほぼ制限なく電気工事を行うことができます。登録電気工事業者と通知電気工事業者を分ける要素は、一般用電気工作物に関わる業務を扱えるかどうかということに集約されます。一般用電気工作物を扱う場合は、無条件に登録電気工事業者となるのです。
通知電気工事業者になるケース
自家用電気工作物に係る電気工事で最大電力500kW未満の需要設備のみを扱う場合は、通知電気工事業者で問題ありません。
ステップ2:電気工事業者として登録するための要件を確認
電気工事事業者として登録するための要件は、登録電気工事業者と通知電気工事業者で微妙に要件が異なります。
申請する際は無駄な手間が発生しないように、自身に合った要件を確認しましょう。
登録電気工事業者で必要な要件
登録電気工事業者として登録するためには、1級電気工事士もしくは2級電気工事士(3年以上の実務経験必要)を主任電気工事士として置くことと、経済産業省令で定める器具を持っていなければいけません。
登録電気工事業者で必要になる器具は次の3つです。
- 絶縁抵抗計
- 接地抵抗計
- 抵抗・交流電圧測定回路計
通知電気工事業者で必要な要件
通知電気工事業者のケースでは主任電気工事士が必要なくなり、経済産業省令で定める器具を持っているだけで十分になります。しかし、要すべき器具は登録電気工事業者よりも多くなり7つになります。
- 絶縁抵抗計
- 接地抵抗計
- 抵抗・交流電圧測定回路計
- 低圧検電器
- 高圧検電器
- 継電器試験装置
- 絶縁耐力試験装置
ステップ3:必要書類を用意する
登録電気工事業者と通知電気工事業者のどちらで申請するのかが決まり、要件も満たしていることが確認できたら、申請に必要な書類を用意しましょう。
必要書類も登録電気工事業者と通知電気工事業者で異なります。
登録電気工事業者で必要な書類
登録電気工事業者で必要な書類は次の8つです。
- 登録電気工事業者登録申請書
- 誓約書(申請者自身のもの)
- 誓約書(主任電気工事士に関するもの)
- 主任電気工事士の従業員証明書(雇用証明書)
- 主任電気工事士等の実務経験を証する書面(様式等は事務処理要領で定める)
- 備付器具明細書
- 登記事項(履歴事項全部)証明書(法人である場合に限る。)
- 登録免許税納付の領収証書
通知電気工事業者で必要な書類
通知電気工事業者で必要な書類は次の4つです。
- 電気工事業者開始通知書
- 誓約書(通知者自身のもの)
- 登記簿謄本(通知者が法人の場合に限る。)
- 備付器具明細書(営業所ごとに作成)
ステップ4:必要書類を提出する
必要な書類を用意できれば、あとはもう提出するだけです。ただし、提出先でも少し注意が必要です。
1つの都道府県内のみで営業所を運営している場合は都道府県知事、2つ以上の都道府県にまたがって営業所を運営している場合は産業保安監督部長もしくは経済産業大臣に申請を行わなければなりません。不備がないように気をつけてください。
登録する前に確認:登録が必要ない「6つの軽微な電気工事」
上記ステップの前に整理しなければならないのが、自社で扱いたい業務が次の6つで完結していないかどうかです。
- ①電圧600V以下で使用する差込み接続器、ねじ込み接続器、ソケット、ローゼットその他の接続器又は電圧600V以下で使用するナイフスイッチ、カットアウトスイッチ、スナップスイッチその他の開閉器にコード又はキャブタイヤケーブルを接続する工事
- ②電圧600V以下で使用する電気機器(配線器具を除く)又は電圧600V以下で使用する蓄電池の端子に電線(コード、キャブタイヤケーブル及びケーブルを含む)をねじ止めする工事
- ③電圧600V以下で使用する電力量計若しくは電流制限器又はヒューズを取り付け、又は取り外す工事
- ④電鈴、インターホーン、火災感知器、豆電球その他これらに類する施設に使用する小型変圧器(二次電圧が36V以下のものに限る。)の二次側の配線工事
- ⑤電線を支持する柱、腕木その他これらに類する工作物を設置し、又は変更する工事
- ⑥地中電線用の暗渠又は管を設置し、又は変更する工事
これら6つの電気工事は電気工事二法で軽微な電気工事に該当し、登録が必要ない工事に分類されています。もし軽微な電気工事しか扱わないのであれば、登録電気工事業者も通知電気工事業者も必要ないので、登録申請の手順を踏む必要はありません。
建設業許可をすでに取得しているときは「みなし登録事業者」になる
建設業を営んでいる事業者の中にはすでに建設業許可を取得していて、新たに電気工事も請け負いたいというケースもあるかと思います。その場合、建設業許可を受けていても電気工事業者として登録する必要が出てくるのですが、建設業許可を取得している場合は登録電気工事業者でも通知電気工事業者でもなく、「みなし登録業者」という分類をされます。
ちなみに、すでに電気工事業者として登録していて、あとから建設業許可を取得した場合も自動的にみなし登録業者に移行されます。
「電気工事業開始届」は必ず提出する
みなし登録業者になった事業者が電気工事を施工するためには、「電気工事業開始届(みなし登録業者の届出)」をしなければいけません。これはすでに登録電気工事業者、もしくは通知電気工事業者として活動していた場合も例外ではありませんので、忘れないようにしましょう。
電気工事業開始届と共に必要な添付書類
みなし登録業者として電気工事業を行うためには、電気工事業開始届以外にも提出しなくてはいけない書類が4つあります。抜け漏れがないように注意してください。
- 誓約書(主任電気工事士に関するもの)
- 主任電気工事士の従業員証明書
- 主任電気工事士等の実務経験を証する書面(様式等は事務処理要領で定める)
- 備付器具明細書
まとめ
500万円未満の電気工事を行うだけであれば建設業許可は不要で、電気工事業者として登録するだけで問題ありません。電気工事業者としての登録は条件によって「登録電気工事業者」と「通知電気工事業者」に分かれているため、自身の事業内容に合わせたものを申請するようにしてください。すでに建設業許可を取得している事業者が、電気工事を行うときは「みなし登録業者」として登録しなければいけません。
建設業に関する法律と電気工事に関する法律は複雑です。混乱してしまわないように気をつけてください。
2021/11/4
2024/10/07
電気工事を行うときに、建設業許可が必要になるかどうかを左右するのは「500万円」という金額です。電気工事業も建設業の1つに該当しますが、状況に応じて必要となる許可等が異なります。そこで、今回は電気工事と建設業許可の関係について解説します。
Contents
500万円以上の電気工事を行う場合、電気工事業の建設業許可が必要
建設業者が税込みで500万円以上の電気工事を請け負うときは、電気工事業の一般建設業許可を受けている必要があります。
また、元請として請け負う工事で、下請工事業者への発注金額の合計が4,000万円以上となる案件を受注するのであれば「電気工事業の特定建設業許可」を取得していなければいけません。
500万円未満の電気工事を行う場合、建設業許可は不要
電気工事で建設業許可が必要になるのは、500万円以上の案件を請け負うときです。
言い換えれば、500万円未満の「軽微な電気工事」であれば建設業許可は不要です。
建設業許可は不要だが、電気工事業の登録が必要
建設業の線引きは曖昧で、一方で許可がいらなくとも、もう一方では必要になるケースもあります。電気工事もその例にもれず、電気工事を行う時は500万円以下であっても電気工事士法と電気工事業法によって定められている「電気工事業の登録」を各都道府県にしなければいけないことが法律で定められています。
500万円未満の電気工事であれば、手続きが必要ないというわけではないので注意しましょう。
電気工事の建設業許可を申請する注意点に関しては、以下の記事で詳しく解説しております!
電気工事業の登録とは
電気工事業の登録が義務付けられている主な理由は、安全で健全な施工を確保するためです。登録の主な要件として「主任電気工事士」を営業所ごとに置かなければなりません。
また、主任電気工事士となれるのは次のどちらか一方の項目を満たしている必要があります。
- 「第一種電気工事士」の免状の交付を受けている者
- 「第二種電気工事士」の免状の交付を受けた後、電気工事に関し3年以上の実務経験を有する者
電気工事業はきちんと施工されないと爆発や火災など著しい被害を及ぼす事故が起きかねません。そのため、電気工事業を行うには請負業者が専門の技能をきちんと習得していることが大切になるのです。
万が一、未登録で電気工事業を行ったときは法律違反になります。最悪の場合は1年以下の懲役、もしくは10万円以下の罰金、あるいはその両方が課されるケースがあります。
電気工事業に登録するためのステップを紹介
電気工事業として登録することは、要件さえ満たせていればさほど難しいものではありません。今回は電気工事業として登録する際のステップをご紹介します。
ステップ1:「登録電気工事業者」か「通知電気工事業者」を確認
電気工事業の登録には「登録電気工事業者」と「通知電気工事業者」の2パターンがあります。
電気工事業の登録は実際に取り扱う施工の内容によって「通知電気工事業者」で事足りるのか、「登録電気工事業者」でなくてはいけないのかが変わってきます。登録では登録税が22,000円ほどかかりますが、通知では費用がかからないため、登録する前に事前にどちらになるのか確かめておくようにしましょう。
登録電気工事業者になるケース
登録電気工事業者では、ほぼ制限なく電気工事を行うことができます。登録電気工事業者と通知電気工事業者を分ける要素は、一般用電気工作物に関わる業務を扱えるかどうかということに集約されます。一般用電気工作物を扱う場合は、無条件に登録電気工事業者となるのです。
通知電気工事業者になるケース
自家用電気工作物に係る電気工事で最大電力500kW未満の需要設備のみを扱う場合は、通知電気工事業者で問題ありません。
ステップ2:電気工事業者として登録するための要件を確認
電気工事事業者として登録するための要件は、登録電気工事業者と通知電気工事業者で微妙に要件が異なります。
申請する際は無駄な手間が発生しないように、自身に合った要件を確認しましょう。
登録電気工事業者で必要な要件
登録電気工事業者として登録するためには、1級電気工事士もしくは2級電気工事士(3年以上の実務経験必要)を主任電気工事士として置くことと、経済産業省令で定める器具を持っていなければいけません。
登録電気工事業者で必要になる器具は次の3つです。
- 絶縁抵抗計
- 接地抵抗計
- 抵抗・交流電圧測定回路計
通知電気工事業者で必要な要件
通知電気工事業者のケースでは主任電気工事士が必要なくなり、経済産業省令で定める器具を持っているだけで十分になります。しかし、要すべき器具は登録電気工事業者よりも多くなり7つになります。
- 絶縁抵抗計
- 接地抵抗計
- 抵抗・交流電圧測定回路計
- 低圧検電器
- 高圧検電器
- 継電器試験装置
- 絶縁耐力試験装置
ステップ3:必要書類を用意する
登録電気工事業者と通知電気工事業者のどちらで申請するのかが決まり、要件も満たしていることが確認できたら、申請に必要な書類を用意しましょう。
必要書類も登録電気工事業者と通知電気工事業者で異なります。
登録電気工事業者で必要な書類
登録電気工事業者で必要な書類は次の8つです。
- 登録電気工事業者登録申請書
- 誓約書(申請者自身のもの)
- 誓約書(主任電気工事士に関するもの)
- 主任電気工事士の従業員証明書(雇用証明書)
- 主任電気工事士等の実務経験を証する書面(様式等は事務処理要領で定める)
- 備付器具明細書
- 登記事項(履歴事項全部)証明書(法人である場合に限る。)
- 登録免許税納付の領収証書
通知電気工事業者で必要な書類
通知電気工事業者で必要な書類は次の4つです。
- 電気工事業者開始通知書
- 誓約書(通知者自身のもの)
- 登記簿謄本(通知者が法人の場合に限る。)
- 備付器具明細書(営業所ごとに作成)
ステップ4:必要書類を提出する
必要な書類を用意できれば、あとはもう提出するだけです。ただし、提出先でも少し注意が必要です。
1つの都道府県内のみで営業所を運営している場合は都道府県知事、2つ以上の都道府県にまたがって営業所を運営している場合は産業保安監督部長もしくは経済産業大臣に申請を行わなければなりません。不備がないように気をつけてください。
登録する前に確認:登録が必要ない「6つの軽微な電気工事」
上記ステップの前に整理しなければならないのが、自社で扱いたい業務が次の6つで完結していないかどうかです。
- ①電圧600V以下で使用する差込み接続器、ねじ込み接続器、ソケット、ローゼットその他の接続器又は電圧600V以下で使用するナイフスイッチ、カットアウトスイッチ、スナップスイッチその他の開閉器にコード又はキャブタイヤケーブルを接続する工事
- ②電圧600V以下で使用する電気機器(配線器具を除く)又は電圧600V以下で使用する蓄電池の端子に電線(コード、キャブタイヤケーブル及びケーブルを含む)をねじ止めする工事
- ③電圧600V以下で使用する電力量計若しくは電流制限器又はヒューズを取り付け、又は取り外す工事
- ④電鈴、インターホーン、火災感知器、豆電球その他これらに類する施設に使用する小型変圧器(二次電圧が36V以下のものに限る。)の二次側の配線工事
- ⑤電線を支持する柱、腕木その他これらに類する工作物を設置し、又は変更する工事
- ⑥地中電線用の暗渠又は管を設置し、又は変更する工事
これら6つの電気工事は電気工事二法で軽微な電気工事に該当し、登録が必要ない工事に分類されています。もし軽微な電気工事しか扱わないのであれば、登録電気工事業者も通知電気工事業者も必要ないので、登録申請の手順を踏む必要はありません。
建設業許可をすでに取得しているときは「みなし登録事業者」になる
建設業を営んでいる事業者の中にはすでに建設業許可を取得していて、新たに電気工事も請け負いたいというケースもあるかと思います。その場合、建設業許可を受けていても電気工事業者として登録する必要が出てくるのですが、建設業許可を取得している場合は登録電気工事業者でも通知電気工事業者でもなく、「みなし登録業者」という分類をされます。
ちなみに、すでに電気工事業者として登録していて、あとから建設業許可を取得した場合も自動的にみなし登録業者に移行されます。
「電気工事業開始届」は必ず提出する
みなし登録業者になった事業者が電気工事を施工するためには、「電気工事業開始届(みなし登録業者の届出)」をしなければいけません。これはすでに登録電気工事業者、もしくは通知電気工事業者として活動していた場合も例外ではありませんので、忘れないようにしましょう。
電気工事業開始届と共に必要な添付書類
みなし登録業者として電気工事業を行うためには、電気工事業開始届以外にも提出しなくてはいけない書類が4つあります。抜け漏れがないように注意してください。
- 誓約書(主任電気工事士に関するもの)
- 主任電気工事士の従業員証明書
- 主任電気工事士等の実務経験を証する書面(様式等は事務処理要領で定める)
- 備付器具明細書
まとめ
500万円未満の電気工事を行うだけであれば建設業許可は不要で、電気工事業者として登録するだけで問題ありません。電気工事業者としての登録は条件によって「登録電気工事業者」と「通知電気工事業者」に分かれているため、自身の事業内容に合わせたものを申請するようにしてください。すでに建設業許可を取得している事業者が、電気工事を行うときは「みなし登録業者」として登録しなければいけません。
建設業に関する法律と電気工事に関する法律は複雑です。混乱してしまわないように気をつけてください。