建設業許可の種類とそれぞれの許可の違いを解説!

2024/6/8

2024/10/07

【この記事の監修】

伊東綜合事務所 代表 伊東良之

伊東綜合事務所

代表/行政書士伊東 良之

2008年に行政書士事務所を開業以降、高度専門職や技術・人文知識・国際業務などの就労系在留資格を中心に、配偶者、永住などの身分系在留資格にも幅広く対応。
自分自身も外国で就労ビザを取得し働いた経験を踏まえ、不安を感じながらも日本での活躍を希望する外国人にとって一番近い存在になるべく丁寧な対応を心掛け、在留資格申請を行っている。

500万円以上の工事を受注する場合や元請業者から建設業許可の取得を要請された場合に申請すべき建設業許可の種類を明確にしなくては、許可申請に向けて「なにを」「どのように」準備すれば良いのか分かりません。

このコラムでは「建設業許可の種類」と建設業許可の要件となっている専任技術者の「資格」について解説致します。

建設業許可の種類

自社で申請すべき建設業許可の種類を判断するときに以下の4つの視点で検討する必要があります。

  • 知事許可と大臣許可の違いとは?
  • 一般建設業許可と特定建設業の違いとは?
  • 29種類の建設業許可のうち、どの業種の許可が必要か?
  • 実務経験や資格を持つ技術者が社内にいるか?

知事許可と大臣許可の違いとは?

知事許可でも、大臣許可でも工事の施工場所に制約はありません。

例えば、東京都知事許可を取得している会社は北海道や沖縄が現場の工事でも許可業者として工事を請け負い、施工することができます。(工事の契約は東京都内の営業所で行う必要があります。)

では、知事許可と大臣許可の違いは何でしょうか?

知事許可は一つの都道府県のみに営業所がある場合のことを言い、

大臣許可は複数の都道府県に営業所がある場合のことを言います。

※「営業所」とは、請負契約の締結に係る実体的な行為(見積・入札・契約等)を行う事務所を言 います。

単なる登記上の本店に過ぎないもの、請求や入金等の事務作業のみを行う事務連絡所、 工事作業員の詰める工事事務所や作業所等は、営業所には該当しません。

(引用:東京都の「建設業許可申請変更の手引」より)

なお、建設業許可の要件として「専任技術者を営業所ごとに配置すること」を求められますので、複数の都道府県に営業所があるとしても1つの営業所にしか専任技術者を配置できない場合、大臣許可は申請できず、知事許可を申請することになります。

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一般建設業許可と特定建設業許可の違いとは?

「一般建設業許可」と「特定建設業許可」の違いは請負うことのできる工事金額の大きさではありません。

いずれの許可も請負うことのできる工事の金額に上限はありません。

この2つの許可の違いは「下請契約金額」です。

一般建設業許可 下請けに発注する金額の合計が4,000万円未満(建築一式工事の場合は6,000万円未満)

特定建設業許可 下請けに発注する金額の合計が4,000万円以上(建築一式工事の場合は6,000万円以上)

なお、同一の業種について、一般建設業許可と特定建設業許可の両方を受けることはできません。

また、一般建設業許可と特定建設業許可では許可を受けるための要件も異なります。

専任技術者について

特定建設業の許可を受ける場合、専任技術者は所定の国家資格(一級の国家資格・技術士資格など)、または「指導監督的な実務経験」を求められます。

「指導監督的な実務経験」とは、建設工事の設計又は施工の全般について、元請として工事現場主任又は工事現場監督のような立場で工事を指導した経験です。

ただし、「指定建設業(土・建・電・管・鋼・舗・園)」については、指導監督的な実務経験を持つだけの専任技術者では、特定建設業の許可を受けることはできません(一級の国家資格・技術士資格・大臣認定が必要です)。

財産的基礎について

一般建設業許可と特定建設業許可では、財産要件が大きく異なります。

一般建設業許可では自己資本が500万円以上(もしくは金融機関が発行する500万円以上の残高証明書)で要件を満たすことができますが、特定建設業許可では以下の4つの要件を求められます。

  • 欠損の額が資本金の20%を超えないこと。
  • 流動資本比率が75%以上であること。
  • 資本金が2,000万円以上あること。
  • 自己資本が4,000万円以上あること。

法人の場合の特定建設業の財産的基礎要件は以下の計算式で確認することができます。

欠損比率 (繰越利益剰余金の負の額-(資本剰余金+利益準備金+その他利益剰余金(繰越利益剰余金を除く)))÷資本金×100≦20%

流動比率 (流動資産合計÷流動負債合計)×100≧75%

資本金額 資本金≧2,000万円

自己資本 純資産合計≧4,000万円

一般建設業許可と特定建設業許可ではいずれも受注できる工事の金額の上限はありませんが、工事金額が大きい工事では多くの協力業者(下請け業者)へ専門工事を発注することになり、その発注金額が4,000万円(建築一式工事の場合は6,000万円)を超えるような場合には特定建設業許可を取得する必要があります。

29種類の建設業許可のうち、どの業種の許可が必要か?

建設業許可では工事の内容により、土木一式工事と建築一式工事の2つの一式工事と27の専門工事の計29種類に分かれています。

まず取りたい種類の建設業許可を見極め、次に自社がその取りたい建設業許可の要件を満たしているか確認し、そして取得できる建設業許可の申請をします。

建設業の種類

建設業の種類 主な例示
土木工事業 橋梁、ダム、空港、トンネル、道路、護岸工事など

(元請業者の立場で総合的な企画、指導、調整のもとに土木工作物を建設する工事であり、複数の下請業者によって施工される大規模かつ複雑な工事)

建築工事業 建物の新築や増改築など、建築確認を必要とする工事

(元請業者の立場で総合的な企画、指導、調整のもとに建築物を建設する工事であり、複数の下請業者によって施工される大規模かつ複雑な工事)

大工工事業 大工、型枠、造作工事など
左官工事業 左官、モルタル、吹付け工事など
とび・土工工事業 とび工、ひき工、解体、コンクリート、土工事など
石工事業 石積み、コンクリートブロック積み工事など
屋根工事業 屋根ふき工事、屋根一体型の太陽光パネル設置工事など
電気工事業 発電設備、送電線、機内電気設備、照明設備工事など
管工事業 冷暖房設備、給排水設備、浄化槽、ダクト工事など
タイル・れんが・

ブロック工事業

タイル張り、レンガ積み、スレート張り工事など
鋼構造物工事業 鉄骨、鉄塔、屋外広告、門扉、貯蔵タンク設置工事など
鉄筋工事業 鉄筋加工組み立て、ガス圧接工事など
舗装工事業 アスファルト舗装、コンクリート舗装、ブロック舗装、

路盤築造工事など

しゅんせつ工事業 しゅんせつ工事
板金工事業 板金加工取り付け工事、建築板金工事など
ガラス工事業 ガラス加工取り付け工事、ガラスフィルム工事など
塗装工事業 塗装、溶射、路面標示工事など
防水工事業 アスファルト防水、モルタル防水、シーリング工事など
内装仕上工事業 インテリア、壁張り、床仕上げ、畳、ふすま、天井、

家具工事など

機械器具設置工事業 プラント設備、楊配水機器設置、舞台装置設置、

サイロ設置工事など

熱絶縁工事業 冷暖房設備、動力設備等の熱絶縁工事、

ウレタン吹付け断熱工事など

電気通信工事業 電気通信線路設備工事、データ通信設備工事、

放送機械設置工事など

造園工事業 植栽、地被、地ごしらえ、公園設備工事など
さく井工事業 さく井、温泉掘削、さく孔、石油掘削、天然ガス掘削工事など
建具工事業 金属製建具、サッシ、シャッター、自動ドア取付工事など
水道施設工事業 取水施設、浄水施設、配水施設工事など
消防施設工事業 屋内消火栓、スプリンクラー、消火設備、

火災報知設備工事など

清掃施設工事業 ごみ処理施設、し尿処理施設工事
解体工事業 工作物解体工事

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実務経験や資格を持つ技術者が社内にいるか?

建設業許可の申請を行うには、営業所に許可の要件を満たした専任技術者を置く必要があります。

そして、特定建設業の「指定建設業(土木・建築・電気・管・鋼構造・舗装・造園)」を除き、多くの建設業の専任技術者は「実務経験」、もしくは「資格」により許可要件を満たす必要があります。

実務経験

学歴や資格を問わず、申請する建設業の種類の工事に従事していた経験が10年以上あれば、専任技術者の要件を満たすことができます。

もし、専任技術者の候補者の方が「指定学科」を卒業している場合には、実務経験の証明期間は「大学や高等専門学校卒業の場合は3年」、「高等学校や専修学校を卒業している場合は5年」と短縮されます。

上記の「指定学科」とは、建設業法に定められており、以下の表のとおりです。

許可を受けようとする建設業 学科
土木工事業

舗装工事業

土木工学(農業土木、鉱山土木、森林土木、砂防、治山、緑地又は造園に関する学科を含む。以下この表において同じ。)、都市工学、衛生工学又は交通工学に関する学科
建築工事業

大工工事業

ガラス工事業

内装仕上工事業

建築学又は都市工学に関する学科
左官工事業

とび・土工工事業

石工事業

屋根工事業

タイル・れんが・ブロック工事業

塗装工事業

解体工事業

土木工学又は建築学に関する学科
電気工事業

電気通信工事業

電気工学又は電気通信工学に関する学科
管工事業

水道施設工事業

清掃施設工事業

土木工学、建築学、機械工学、都市工学又は衛生工学に関する学科
鋼構造物工事業

鉄筋工事業

土木工学、建築学又は機械工学に関する学科
しゆんせつ工事業 土木工学又は機械工学に関する学科
板金工事業 建築学又は機械工学に関する学科
機械器具設置工事業

消防施設工事業

建築学、機械工学又は電気工学に関する学科
熱絶縁工事業 土木工学、建築学又は機械工学に関する学科
造園工事業 土木工学、建築学、都市工学又は林学に関する学科
さく井工事業 土木工学、鉱山学、機械工学又は衛生工学に関する学科
建具工事業 建築学又は機械工学に関する学科

 

資格

建設工事に関連する国家資格や一部の民間資格の保有者は、実務経験の証明が不要とされます(一部の資格では実務経験を求めるものもあります)。

 

許可を受けようとする建設業の種類 資格
土木工事業 1級建設機械施工技士

2級建建設機械工技士

1級土木施工管理技士

2級土木施工管理技士(土木)

技術士 (建設)

技術士 (建設「鋼構造及びコンクリート」)

技術士 (農業「農業土木」)

技術士 (水産「水産土木」)

技術士 (森林「森林土木」)

建築工事業 1級建築施工管理技士

2級建築施工管理技士(建設)

1級建築士

2級建築士

大工工事業 1級建築施工管理技士

2級建築施工管理技士(躯体・仕上げ)

1級建築士

2級建築士

木造建築士

型枠施工技能士

建築大工技能士

左官工事業 1級建築施工管理技士

2級建築施工管理技士(仕上げ)

左官技能士

とび・土工工事業 1級建設機械施工技士

2級建設機械施工技士

1級土木施工管理技士

2級土木施工管理技士(土木・薬液注入)

1級建築施工管理技士

2級建築施工管理技士(躯体)

技術士(建設)

技術士(建設「鋼構造及びコンクリート」)

技術士(農業「農業土木」)

技術士(水産「水産土木」)

技術士(森林「森林土木」)

とび・とび工技能士

型枠施工技能士

ウェルポイント技能士

コンクリート圧送施工技能士

登録基礎ぐい工事(民間資格)

地すべり防止工事士(資格取得後1年の実務経験)(民間資格)

石工事業 1級土木施工管理技士

2級土木施工管理技士(土木)

1級建築施工管理技士

2級建築施工管理技士(仕上げ)

技能検定(ブロック建築・ブロック建築工・コンクリート積みブロック施工)

技能検定(石工・石材施工・石積み)

屋根工事業 1級建築施工管理技士

2級建築施工管理技士(仕上げ)

1級建築士

2級建築士

技能検定板金板金・板金工(選択科目「建築板金作業」)

技能検定(かわらぶき・ストレート施工)

電気工事業 1級電気施工管理技士

2級電気施工管理技士

技術士(建設)

技術士(建設「鋼構造及びコンクリート」)

技術士(電気電子)

第1種電気工事士

第2種電気工事士+資格取得後3年以上の実務経験※

電気主任技術者+資格取得後5年以上の実務経験

建築設備士+合格後1年の実務経験(民間資格)

1級計装+合格後1年以上の実務経験(民間資格)

管工事業 1級管施工管理技士

2級管施工管理技士

技術士(機械「流体工学」または「暖冷房及び冷凍機械」)

技術士(上下水道)

技術士(上下水道「上水道及び工業用水道」)

技術士(衛生工学)

技術士(衛生工学「水質管理」)

技術士(「廃棄物処理」または「汚物処理」)

給水装置工事主任技術者

技能検定(空気調和設備配管)

技能検定(給排水衛生設備配管)

技能検定(配管・配管工)

建築設備資格者+合格後1年以上の実務経験(民間資格)

1級計装士+合格後1年以上の実務経験(民間資格)

タイル・れんが・

ブロック工事業

1級建築施工管理技士

2級建築施工管理技士(躯体・仕上げ)

1級建築士

2級建築士

技能検定(タイル張り・タイル貼り工)

技能検定(築炉・築炉工・れんが積み)

技能検定(ブロック建築・ブロック建築工・コンクリート積みブロック施工)

鋼構造物工事業 1級土木施工管理技士

2級土木施工管理技士(土木)

1級建築施工管理技士

2級建築施工管理技士(躯体)

1級建築士

技術士(建設「鋼構造及びコンクリート」)

技能検定(鉄工・製罐)

鉄筋工事業 1級建築施工管理技士

2級建築施工管理技士(躯体)

技能検定(鉄筋組立て・鉄筋施工(選択科目「鉄筋施工図作成作業」及び「鉄筋組立て作業」))

舗装工事業 1級建設機械施工管理技士

2級建設機械施工管理技士

1級土木施工管理技士

2級土木施工管理技士(土木)

技術士(建設)

技術士(建設「鋼構造及びコンクリート」)

しゅんせつ工事業 1級土木施工管理技士

2級土木施工管理技士(土木)

技術士(建設)

技術士(建設「鋼構造及びコンクリート」)

技術士(水産「水産土木」)

板金工事業 1級建築施工管理技士

2級建築施工管理技士(仕上げ)

技能検定(工場板金)

技能検定(建築板金・板金工(選択科目「建築板金作業」))

技能検定(板金・板金工・打出し板金)

ガラス工事業 1級建築施工管理技士

2級建築施工管理技士(仕上げ)

技能検定(ガラス施工)

塗装工事業 1級土木施工管理技士

2級土木施工管理技士(鋼構造物塗装)

1級建築施工管理技士

2級建築施工管理技士(仕上げ)

技能検定(路面表示施工)

技能検定(塗装・土木塗装・木工塗装工)

技能検定(建築塗装・建築塗装工)

技能検定(金属塗装・金属塗装工)

技能検定(噴霧塗装)

防水工事業 1級建築施工管理技士

2級建築施工管理技士(仕上げ)

技能検定(防水施工)

内装仕上工事業 1級建築施工管理技士

2級建築施工管理技士(仕上げ)

1級建築士

2級建築士

技能検定(畳製作・畳工)

技能検定(内装仕上げ施工・カーテン施工・天井仕上げ施工・床仕上げ施工・表装・表具・表具工)

機械器具設置工事業 技術士(機械)

技術士(機械「流体工学」または「熱工学」)

熱絶縁工事業 1級建築施工管理技士

2級建築施工管理技士(仕上げ)

技能検定(熱絶縁施工)

電気通信工事業 1級電気通信工事施工管理技士

2級電気通信工事施工管理技士

技術士(電気電子)

電気通信主任技術者+資格取得後5年の実務経験

造園工事業 一級造園施工管理技士

二級造園施工管理技士

技術士(建設「総合技術」)

技術士(建設「鋼構造及びコンクリート」)

技術士(森林「林業」)

技術士(森林「森林土木」)

技能検定(造園)

さく井工事業 技術士(上下水道「上水道及び工業用水道」)

技能検定(さく井)

地すべり防止工事士+資格取得後1年の実務経験

建具工事業 1級建築施工管理技士

2級建築施工管理技士(仕上げ)

技能検定(建具製作・建具工・木工(選択科目「建具製作作業」)・カーテンウォール施工・サッシ施工)

水道施設工事業 1級土木施工管理技士

2級土木施工管理技士(土木)

技術士(水道)

技術士(水道「上水道及び工業用水道」)

技術士(衛生工学「水質管理」)

技術士(衛生工学「廃棄物処理」または「汚物処理」)

消防施設工事業 甲種消防設備士

乙種消防設備士

清掃施設工事業 技術士(衛生工学「廃棄物処理」または「汚物処理」)
解体工事業 1級土木施工管理技士

2級土木施工管理技士(土木)

1級建築施工管理技士

2級建築施工管理技士(建築・躯体)

技術士(建設・総合技術監理)

技術士(建設「鋼構造及びコンクリート」)

技能検定(ウェルポイント施工)

技能検定(とび・とび工)

解体工事施工技士(民間資格)

 

まとめ

工事の種類によっては29種類の建設工事のうち、どの建設工事に該当するのか、明確に分からないこともあります。

しかし、自社で施工している工事の種類を明確にしないと専任技術者の要件も明確にならないので申請の準備ができません。

申請業種がはっきりと分からない場合は、申請予定の役所や建設業専門の行政書士へお問い合わせ下さい。

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